法定相続分の相続登記について

2021年9月25日土曜日

相続登記

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法定相続分の相続登記について


法定相続分の相続登記について説明です。


・法定相続分どおりの相続登記とは?いつまでにしなくてはいけない?必要書類は?法定相続情報一覧図って何?

・相続登記は相続人全員で手続きをしなくてはいけないの?法定相続分の相続登記はひとりで単独申請できるか? 

・法定相続登記後に遺産分割協議が成立したら?


などについて説明しています。


法定相続分どおりの相続登記とは?


法定相続分で相続登記をするとは?

民法で定められた相続人が、民法で定められた相続割合による持分で相続登記をすることです。

ひとが亡くなったときに、その人の財産を誰が相続するのかについて、民法では、相続する人の順番を定めています。また、どのくらいの割合で相続するのかについても定めています。

被相続人の配偶者は、常に相続人となります。

そして、配偶者以外の相続人の順位は以下のとおりです。


 第1順位:子

 第2順位:父母、祖父母(直系尊属)

 第3順位:兄弟姉妹


先に書いたように、配偶者はどの順位の人とも共同して相続人となります。

そして、各法定相続人がそれぞれ相続する法定相続分は以下のとおりです。


・子及び配偶者が相続人の場合
  配偶者2分の1 子2分の1

・配偶者及び直系尊属(父母、祖父母)の場合
  配偶者3分の2 直系尊属2分の1

・配偶者及び兄弟姉妹の場合
  配偶者4分の3 兄弟姉妹4分の1


法定相続分については、こちらに詳しく解説しています。

 ▶【相続権の順位と割合】法定相続人は誰?どれだけ相続するのか?


相続登記はいつまでにしなくてはいけないの?


いまのところ、相続登記には期限はありません。

登記するかしないかは任意です。

しかし、 2024年を目処に、相続登記の義務化がされる法案が参院本会議で可決されました。

今までは任意でしたが、この法改正が施行されると、相続を知った日から3年以内に登記しなければいけなくなります。



法定相続分で相続登記をする場合の必要書類は?


法定相続分で相続登記をする場合の必要書類は下記のとおりです。

費用などについてもまとめました。


◆必要書類

・所有権移転登記申請書

 法務局ホームページに見本があります。
  ▶【法務局ホームページ】不動産登記の申請書様式について


・被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本等


・被相続人の住民票の除票もしくは戸籍の附票

 法務局に登記されている亡くなった方の住所のつながりがわかるもの


・相続人の現在戸籍

 被相続人が亡くなった日より後に発行されたもの


・相続人の住民票もしくは戸籍の附票でもよいです


・評価証明書

 相続登記を申請するときの年度のもの、古いものはダメです。


◆費用

・登録免許税: 不動産評価額の1000分の4

 評価証明書の不動産の評価額をもとに計算します。登録免許税は、登記を行う際にかかる税金です。


法定相続情報一覧図って何?


法定相続情報一覧図は、被相続人の法定相続人数の関係を示した図になります。

法定相続人が誰であるかがわかります。

この法定相続情報一覧図は、相続手続きに使用していた戸籍謄本等の束の役割を果たします。

不動産の名義変更をする場合、不動産の所在地ごとに法務局の管轄があります。

複数の不動産をお持ちで、複数の法務局で手続きをしなくてはいけない方は、最初に手続きをする法務局で、法定相続情報一覧図を請求するとよいです。

2箇所目以降の法務局では、一覧図があれば、戸籍を提出しなくてよいからです。

一覧図は銀行等でも使えます。


相続登記は相続人全員で手続きをしなくてはいけないの?


相続人が複数いる場合で、法定相続分に従って相続登記するのであれば、相続人の中の1人が相続人全員のために、相続登記を申請することができます。


例えば、お父さんが亡くなり、その相続人が、 妻A 兄B 妹C だとします。


 妻Aさん持分2分の1

 兄Bさん持分4分の1

 妹Cさん持分4分の1


で法定相続分で相続登記をするとします。

この場合、兄のBさんが、AさんとCさんのためにひとりで登記申請ができます。

ひとりで登記申請ができるとは、 兄Bさんが、登記申請書を作成し、そこに自分だけが印鑑を押して登記申請ができるということです。

ABCの3人で申請する場合は、登記申請書を作成し、そこに、3人で氏名を記載し押印して、法務局に登記を申請をします。


ひとりで申請する場合、注意すべきは、申請しなかった相続人は登記識別情報通知(昔の登記済権利証)が発行されないことです。

登記識別情報は申請人自らが登記名義人となる場合において通知されます(不動産登記法第21条)。

そのため、先の例でいえば、兄Bさんには登記識別情報が通知されますが、妻のBさんと妹のCさんには、通知されません。

なので注意が必要です。


登記識別情報がないと、どうなるの?

ということになりますが、 登記識別情報は、不動産を売買するときや、銀行から融資を受けたり、住宅ローンの借り換えをするときなどの抵当権を設定するときに必要になります。

登記識別情報がない場合には別手続きで代替できますが、

司法書士の本人確認や公証人の本人確認など費用が余計に掛かってしまいます。

なので、相続人全員が登記の申請人となって相続登記手続きを進めることをおすすめします。


法定相続分の相続登記は自分の相続持分だけを単独申請できるか?


できません。

自分の持分だけの登記をすることはできません。

先の例でいうと、兄Bさんが、自分の相続持分の4分の1だけを法務局に申請しても受理されません。

あくまでも、できるのは、相続人全員ABCの分の登記になります。

ちなみに下記のような登記先例というものがあり、否定されています。
 ↓
共同相続人の1人の持分のみについて、その相続登記をすることはできない(昭和30年10月15日民甲2216)


法定相続登記後に遺産分割協議が成立したら? 


 妻Aさん持分2分の1

 兄Bさん持分4分の1

 妹Cさん持分4分の1


3人の法定相続分で相続登記を終えた後に、遺産分割協議をして、当該不動産を兄のBさんが相続することになったとします。

この場合は、Bさん単独名義に変更する登記をします。

方法は3つあります。


1、「遺産分割」を原因として、AさんとCさんの持分をBに移転する

2、一度した法定相続の登記を抹消して、Bさんへの相続登記をやり直す

3、所有権更正登記をする


「遺産分割」を原因として、AさんとCさんの持分をBに移転する


「遺産分割(日付は遺産分割した日付」を原因とする「C、D持分全部移転登記」を行います。

この場合の登録免許税はBへの持分全部移転登記について、不動産の固定資産評価額に移転すべきA、Cの持分割合(上記事例では4分の3)を乗じた金額の0.4%(1000分の4)が必要となります。


一度した法定相続の登記を抹消して、Bさんへの相続登記をやり直す


1度した、法定相続分の相続登記を抹消します。 

「錯誤」を原因として、「所有権抹消登記」をします。

そして、再度、遺産分割の結果に基づき、「相続」を原因とする「所有権移転登記」を行います。

この場合の登録免許税は所有権抹消登記について不動産1つにつき1000円です。

また、所有権移転登記について不動産の固定資産評価額の0.4%(1000分の4)が必要となります。

なお、利害関係人がいる場合にはそのひとの承諾書が必要になります。

例えば、妹Cさんが法定相続の登記をした後に持分を差押えされた場合などです。

承諾書がないと抹消登記はできません。


所有権更正登記をする


「錯誤」を原因として「所有権更正登記」を行います。

 更正登記とは、 「錯誤又は遺漏のため登記と実体関係の間に原始的な不一致がある場合に、その不一致を解消させるべく既存登記の内容の一部を訂正補充する目的をもってされる登記」です。

更正登記の前後で登記に同一性がある場合に認められます。

同一性がある場合とは、更正対象の登記名義人が更正登記後にも存在していればオッケーです。

ABC→B なので、要件を満たします。

この場合の登録免許税は不動産ひとつにつき1000円です。

なお、利害関係人がいる場合にはそのひとの承諾書が必要になります。

承諾書がないと更正登記はできません。


【おわりに】自分で相続登記をしたいと考えている方へ


法定相続登記について書きました。

自分で法務局で相続登記をしたいと考えている方は、こちらもご参考ください
 ↓
 ▶相続登記の手順をまとめました【自分でやりたい方向け】



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