「相続人以外の被相続人の親族が,無償で被相続人の療養看護等を行った場合には,一定
の要件の下で,相続人に対して金銭請求をすることができるようにする。」
・長男の嫁が、長男の父を介護
↓
・父死亡
↓
・寄与分は、共同相続人にしかみとめられない
↓
・嫁は、相続分はもちろん、寄与分も主張できない
↓
・これだと不公平
そこで、今回の相続法改正で、新たに特別の寄与という制度が新設されました。
・まず、相続人と話し合いをして、寄与に応じた額の金銭の支払を請求する。
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・話し合いがまとまらない→家庭裁判所へに対して協議に代わる処分を請求する。
特別の寄与をした親族は、被相続人が亡くなった後、相続人に対して寄与に応じた額の金銭の支払を請求できます。
相続人との話し合いで、話がまとまればいよいのですが、ダメなら家庭裁判所に調停の申し立てをします。
といった制度です。
相続法の改正で、新たに新設されました。
改正前から寄与分という制度がありましたが、
これは、簡単に説明すると、
亡くなった方(被相続人)の療養看護等に努めてきた相続人対し、その貢献した分を寄与分として、法定相続分にプラスして、相続財産を多くもらえるようにする制度です。
相続人間の公平を保つためのもので、相続人以外のひとには認められません。
例えば、長男のお嫁さんが、どんなに長男の父の介護に尽くしても,相続人ではないため,被相続人の死亡に際し,相続財産の分配にあずかれず、不公平だということが言われていました。
・長男の嫁が、長男の父を介護
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・父死亡
↓
・寄与分は、共同相続人にしかみとめられない
↓
・嫁は、相続分はもちろん、寄与分も主張できない
↓
・これだと不公平
【特別寄与料】民法の条文は第1050条
特別の寄与については、民法の第1050条で定められています。
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第十章 特別の寄与
第千五十条
1 被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(相続人、相続の放棄をした者及び第八百九十一条の規定に該当し又は廃除によってその相続権を失った者を除く。以下この条において「特別寄与者」という。)は、相続の開始後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(以下この条において「特別寄与料」という。)の支払を請求することができる。
2 前項の規定による特別寄与料の支払について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、特別寄与者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から六箇月を経過したとき、又は相続開始の時から一年を経過したときは、この限りでない。
3 前項本文の場合には、家庭裁判所は、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、特別寄与料の額を定める。
4 特別寄与料の額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない。
5 相続人が数人ある場合には、各相続人は、特別寄与料の額に第九百条から第九百二条までの規定により算定した当該相続人の相続分を乗じた額を負担する。
特別寄与者になりえるのは、
相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族です。
親族とは、6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族のことをいいます。
血族(けつぞく)とは,血がつながっている人のことをいいます。
姻族(いんぞく)とは,配偶者の血族、
自分の兄弟姉妹・甥姪の配偶者、おじ・おばの配偶者、子や孫の配偶者を姻族といいます。
なお、相続人、相続の放棄をした者、欠格事由に該当し又は廃除によってその相続権を失った者は特別寄与者にはなれません。
特別寄与料を請求する手続き
特別寄与料を請求する手続きの流れは次のとおりです。
・まず、相続人と話し合いをして、寄与に応じた額の金銭の支払を請求する。
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・話し合いがまとまらない→家庭裁判所へに対して協議に代わる処分を請求する。
特別の寄与をした親族は、被相続人が亡くなった後、相続人に対して寄与に応じた額の金銭の支払を請求できます。
調停では、調停委員が当事者の間に入って話し合いによる解決を目指しますが、
調停でもまとまらなければ、家庭裁判所による審判手続きに移行します。
家庭裁判所は、一切の事情を考慮して特別寄与料の額を決定します。
なお、相続開始及び相続人を知った時から6か月の経過または相続の開始の時から1年を経過するまでに請求しなくてはいけません
調停を申し立てる可能性を考慮して早めに対応することをおすすめします。
「特別の寄与に関する処分調停」についての詳しい内容は、家庭裁判所のホームページを参照してください。
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特別寄与料の金額、相場は?計算方法について
介護を行った場合の寄与料の金額は、実務上では次の計算式で決めることが多いようです。
介護報酬基準額× 療養看護日数 × 裁量的割合(0.5~0.8)
・介護報酬基準額
→介護報酬基準額とは、事業者が利用者に介護サービスを提供した場合に、その対価として事業者に支払われるサービス費用のことで、厚生労働大臣が、社会保障審議会での有識者の意見を聴いて、決定しています。
・療養看護日数
→ そのままですが、療養看護した日数です。
・裁量的割合(0.5~0.8)
→最後に「裁量的割合」を掛け算しますが、
「介護報酬基準額」は、資格者への報酬を前提とした金額です。
一般人が行う介護の報酬額はそれよりも低額だろうという意味から、
実務では0.5~0.8の間で個別の事例の程度によって修正しています。
特別寄与料の相続税の取り扱いについて【相続税2割加算】
特別寄与料の相続税についてです。
特別寄与者
特別寄与料相当額を被相続人から遺贈により取得したものとみなされます。
そして、相続税の課税対象となります。
「遺贈により取得したものとみなされる」→相続税2割加算の対象。
★相続税額の2割加算とは?
相続税額の2割加算とは、相続や遺贈(遺言によって財産を与えること)などによって財産を取得した人が、被相続人(亡くなった人)の一親等の血族(代襲相続人を含む)と配偶者以外の人の場合には、その人の相続税額にその相続税額の2割に相当する金額が加算されるという制度です。
特別寄与料の額が確定し、新たに相続税の納税義務が生じた特別寄与者は、その事由が生じたことを知った日から10ヶ月以内に相続税の申告書を提出する必要があります。
特別寄与料を支払う相続人
特別寄与料を支払う相続人は、支払うべき特別寄与料の額を課税価格から控除可能。
相続人等は、相続税の申告期限後に特別寄与料を支払うことになっても4ヶ月以内に更正の請求が可能。
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