相続登記をしないとどうなる?【早めに済ませましょう】

2019年9月29日日曜日

司法書士試験と実務について

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「相続登記が義務化される」と聞いたけど、そもそも相続登記って何だ? 相続登記をしないとどんな不利益があるのだろう?

こんな疑問について書いてみたいと思います。

「結論は早めに済ませましょう。」です。

そもそも相続登記とは何ですか?


 「この土地は自分が所有しているものだ」と第三者に主張するためには、法務局の不動産登記簿に自分の名前を登録する必要があります。

相続により、法務局の不動産登記簿の名義を変更する手続きが相続登記です。

例えば、親が亡くなり、その土地や建物を子どもが相続したとします。

この場合、法務局に登記の申請をし、名義を親から子どもへと書き換えます。

増加する所有者不明の土地・建物


この相続登記ですが、現在は法的な義務はありません。

自分の権利の守りたいのならば、登記をしましょうというスタンスです。

普通に生活していれば、「この土地は自分が所有しているものだ」と第三者に主張しなくてはならない場面というのは、そうそうありません。

また、いつまでにしなくてはならないという申請期限もありません。

名義を変えなくても直ちに不都合が生じるわけではありません。

地方の資産価値が低い不動産などは親から相続しても、使い道がないことから放置する人がけっこういるのが実情です。

登記費用や固定定資産税などを支払いたくないために、登記を怠る人もいます。

法務局に登記を申請して、名義を変更するには登録免許税という費用がかかります。

相続で名義変更をする場合、不動産の評価額の0.4%が登録免許税になります。

評価額1000万円なら4万円です。

専門家の司法書士に依頼すれば、登録免許税に加えて、報酬を支払う必要があります。

また、固定資産税などは登記名義人に課されるのが原則です。

このように、相続登記がされないとどうなるでしょう?

相続登記がされなければ、不動産登記簿にはすでに亡くなった方の名義のままです。

何世代にもわたって相続登記が先送りされば、所有者を特定できない土地や家屋が増加します。

全国の所有者を特定できない土地や家屋面積を合計すると九州を上回るとの試算もあります。

そのため、国が、相続登記を義務化するという対策に乗り出しているのです。

相続登記をしないとどんな問題が?


相続登記をしないとどんな不利益があるのでしょうか?

名義を変更せずに放置しておくと、深刻なトラブルに発展するケースもあるので注意です。

【相続関係の複雑化】遺産分割協議が困難になる


法務局で相続登記をするには、遺産分割協議書が必要になります。

相続人全員で協議をして、誰が亡くなった方の財産を相続するのかを話し合い、その結果を遺産分割協議書にして、相続人全員が署名をして、実印を押す必要があります。

全員の印鑑証明書も必要です。

これがけっこうな手間です。

年月が経つと相続関係が複雑になり、相続人の数が増えていきます。

自分の祖父の兄弟の孫とか…

ほとんど他人で、面識のない相続人だらけという状況になりかねません。

そんな方々で集まっても協議してお話がまとまるでしょうか?

集まって話し合うことすら困難だと思われますが…

自分の世代はまだしも、子や孫の世代になると話し合いは、ほぼ不可能に思われます。

【相続が争続に】相続トラブルが発展する場合も… 


ある家族のケースです。 父母と兄弟二人の家族でした。

父の死後、兄弟でよく話し合いをして、高齢の母の面倒をみることを条件に、長男が自宅を相続することになりました。

兄弟でよく話し合いをした結果で、特段のトラブルもありませんでした。

兄は名義を変更するにはお金がかかるし、仕事が忙しいこともあり、相続登記をせず遺産分割協議書は作成しませんでした。

しかし、ある日、弟が交通事故で突然亡くなってしまいます。

残された弟の妻は、夫の死亡で自分の将来が不安になります。

そして、亡くなった夫が相続した、夫の父の相続分の権利は自分のものだと主張しはじめました。

遺産分割協議をしていなければ、弟の父の死亡により、父の所有権は、母1/2、兄1/4、弟1/4の割合で相続されます。

弟は1/4の権利を相続している
 ↓
夫の死亡により、夫(弟)が相続した1/4の権利は自分が相続した

というのが弟の妻は主張です。

長男は要求を断りました。

そして、争いに…

もし、弟が亡くなる前に遺産分割協議書を作成し、相続登記をして自宅を自分の名義に変更しておけば、こんな問題には発展しなかったと考えられます。

相続登記が済んでいれば、法務局の不動産登記簿を見れば、兄が単独で相続したことが証明するのは簡単です。

相続登記をしていないと家を売却できない


不動産を処分しようと考えた時に、売却できないといった問題が生じます。

名義が亡くなった方の名義のままだと売却したくても契約書を作ることができません。

不動産を処分したいなら、売りたい家が自分の名義になっている必要があるのです。

まずは売却による名義変更をするための前提として、その家の相続登記をしなくてはならないのです。

金融機関から家を担保に融資を受けられない


不動産を担保に金融機関から融資を受けたいときも同様です。

亡くなった方の名義のままでは銀行は金お貸してくれません。

自宅を担保に金融機関から融資を受ける場合、金融機関は抵当権設定登記をします。

抵当権設定の登記をする前提として、必ず、相続による名義変更がされている必要があります。

隣地との境界確定はだれとすればいいの?】お隣に迷惑をかける


隣近所に迷惑をかけることもありえます。

お隣が土地を売買するため、境界確定の手続きをしたいと考えているとします。

境界確定は、どこまでが自分の土地なのか境界をはっきりさせるための手続きです。

境界確定はその土地の所有者同士でするものです。

相続した土地を放置しておけば、お隣の方は、誰と境界確定をしていいのかわかりません。

法務局で不動産登記簿の名義を調べても亡くなった方の名義のまま…

境界確定が必要になったときに、登記名義が故人のままではお隣さんも困ってしまうのです。

また、境界確定をしていないと、境界紛争といった別の法律問題が生じることも考えられます。

最後に


様々な理由で相続登記をしない人もいます。

しかし、今後、相続登記は義務化される方向です。

政府が「相続登記」を来年の法改正により義務化するとのこと。

所有者不明の土地・建物の増加を防ぐのがその狙いです。

このような流れもあるので、できるだけ早めに相続登記をしましょう。

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