相続登記について

2019年10月13日日曜日

司法書士試験と実務について

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不動産を所有していた方が亡くなると、その名義を変更する手続きをする必要があります。

なかなか複雑な手続きです。

自分で手続きをしたい方の参考になればと思います。

なお、相続登記について、いつまでにやらないといけないという決まりはありません。

ですが、放置しておくと、相続人に更に相続が発生するなどして、手続をするのに必要な関係者が増えてしまい手続が複雑なってしまいます。

ですので、なるべく早めに手続きを済ませるようにしましょう。

一般的には、次の3つの方法により、相続登記をします。

① 法定相続による(民法の規定による相続割合で相続)

② 遺産分割協議による相続(相続人全員で誰がどのくらいの割合で相続するかを決める)

③ 遺言書による相続(亡くなった方の遺言書に基づいて相続する)

まず、法定相続による登記手続について説明したいと思います。

法定相続


法定相続とは法律に基づいた相続割合で相続をすることです。

相続割合について


相続割合については、民法で次のように決まっています。

相続人が配偶者と子どもの場合

配偶者 2分の1

子ども 2分の1

子どもが2人いれば、2分の1を子ども2人で分けることになります。

例えば、相続人が、配偶者・子どもA・Bの2人の場合であれば、配偶者が2分の1、子どもAが4分の1、子どもBが4分の1ということになります。

相続人が配偶者と直系尊属の場合

配偶者 3分の2

直系尊属 3分の1

子どもがいない場合に限って、直系尊属が相続人となります。

直系尊属とは、亡くなった方の父母や祖父母のことをいいます。

父母がすでに亡くなっていると、祖父母が相続人となります。

相続人が配偶者と兄弟姉妹の場合

配偶者 4分の3

兄弟姉妹 4分の1

子どもも直系尊属もいない場合に兄弟姉妹が相続人になります。

以上のことは配偶者と相続人の両方がいる場合の話ですが、配偶者の方が、先に亡くなってしまっているような場合ですと、①の場合では、子ども全財産を取得します。配偶者も子どもいない場合には、直系尊属が全部を相続することになり(②の配偶者がいない場合のケース)、配偶者も子どもも、直系尊属もいない場合には、兄弟姉妹が全部相続をすることになります(③の配偶者がいない場合のケース)。

手続きの流れ


手続きの流れは次のようになります。

1 法務局で不動産の登記事項証明書(謄本)を取得
 ↓
2 戸籍、住民票、固定資産評価証明書等の必要書類を準備
 ↓
3 登記申請書等の提出書類の作成・準備
 ↓
4 書類を法務局へ提出
 ↓
5 法務局から完了書類の受取

法務局で不動産の登記事項証明書(謄本)を取得


登記を申請するのに、自分で登記申請書というものを作成する必要があります。

この登記申請書を作成するのに、不動産の登記事項証明書(謄本)が必要になります。

また、現在、不動産の名義人がどのように登録されているかを確認する必要があります(昔の住所のままになっていたりする場合があります)。

事前に法務局で登記事項証明書(謄本)を取得しましょう。

(登記事項証明書(謄本)の取得方法について)

戸籍、住民票、固定資産評価証明書等の必要書類を準備 


相続登記手続きにはたくさんの書類が必要になります。

⑴亡くなった方についての必要な書類


①出生から死亡までの戸籍

相続人を確定するため、出生から亡くなるまでの戸籍を市区町村の役場で集める必要があります。

ここが、相続登記の手続きの中で、1番面倒で、難しいところだと思います。

戸籍は、結婚したり、転籍したりすると、新しいものが作成されます。

例えば、結婚する前は、自分のお父さんの戸籍に入っている方が多いと思いますが、結婚をすると、配偶者といっしょになった新しい戸籍が作成されます。

そのため、まずは、亡くなった方の最後の本籍地の役所で、戸籍を取得し、遡って、出生までの戸籍を集める必要があります。

新しい戸籍はまだいいのですが、古い戸籍は手書きになっていて、読み取るのも一苦労だと思います。

役場で戸籍を取得する際に「相続登記で必要なため、出生から死亡までの戸籍が必要です。」と窓口の担当者の方にお話ししましょう。

転籍をしていたりして、遠方の役所で戸籍を取得する必要がある場合には、郵送による取得手続きも可能かと思いますので、役場に電話をして確認するのが、よいかと思います。

②本籍の記載のある除住民票又は戸籍の附票

登記記録と戸籍につながりをつけるための書類です。

登記事項証明書をみていただくとわかると思いますが、名義人について記録されているのは、住所と氏名で本籍の記録はありません。

一方、戸籍については、本籍地と氏名の記載がありますが、住所の記載はありません。

そこで、住所氏名と本籍地の記載のある除住民票によって、登記記録と戸籍につながりをつけることになります。

なお、登記されている住所が昔のままだったりすると、亡くなった最後の住所まで、つながりがつく必要があります。

何度か住所移転している場合には、住所がつながるように住民票を集めますが、この場合は、戸籍の附票というものでもよいです。

戸籍の附票とは、その戸籍に記載されている人の住所の移転の経緯を記録したものです。

⑵相続される方についての必要な書類


戸籍と住民票 

現在の戸籍と住民票が必要になります。

現存していることを確認するためのものです。

戸籍について、亡くなった方とは違い、遡ったりする必要はありません。


⑶固定資産評価証明書


登記を申請するには、登録免許税という費用がかかります。

この登録免許税金額を算出するために、 固定資産税評価証明書を取得する必要があります。

固定資産税評価証明書は市区町村役場で取得できます。

東京都23区であれば、都税事務所で取得することになります。

 登記申請書等の提出書類の作成・準備


法務局ホームページに申請書の様式がありますので、これを利用しましょう。
 ↓

「20)所有権移転登記申請書(相続・法定相続)」を利用します。

各項目についての説明します。

登記の目的は、亡くなった方が単独で所有していたならば、「所有権移転」と記載します。

誰かと共有していたならば、「○○持分全部移転」とします。○○の部分は亡くなった方の名前を書きます。法務太郎持分全部移転といったような書きぶりです。

原因は、日付について亡くなった方の死亡日を記載し、相続とします。

相続人にところ、( 被相続人 )は亡くなった方の氏名のみを記載します。

その次に、相続人について住所氏名を記載します。

住所について、「東京都千代田区九段南1-1-1」など、ハイフンを使って省略せずに、住民票記載のとおり「東京都千代田区九段南一丁目1番1号」と記載します。

申請書が出来上がり、印刷したら、各相続人が名前の横に印鑑を押します。

認印で大丈夫です。

連絡先の電話番号について、平日の日中に連絡を受けることができる電話番号を記載します。携帯電話でも大丈夫です。

書類に不備がある場合に,法務局の担当者の方から連絡をしてもらえるのですが、そのために記載します。

なお、法務局から連絡があったにもかかわらず、書類の訂正せずに放置しておくと、申請を却下される場合があります。

却下処分がされると、提出した書類を返却してもらえなくなり、また最初から書類を作成することになってしまいます。

書類の不備等の連絡がありましたら、速やかに、訂正しましょう。

添付情報は、相続登記に必要な、申請書といっしょに提出する書類をさします。

登記原因証明情報は、戸籍等の役場で集めた書類のことです。

なお、法務局の見本例にあるような「相続関係説明図」というものを作成し、提出すると、登記手続き完了後に、戸籍の書類原本を返却してくれます。

戸籍については、他の手続きでも使用すると思いますので、作成して提出しましょう。

住所証明情報は、相続人の住民票のことです。

「□登記識別情報の通知を希望しません。」
相続登記が完了すると、登記識別情報というものが、法務局から交付されます。

昔でいうところの権利証になります。

希望しないという方はあまりいないと思いますので、何もする必要はありません。

何らかの理由で、希望しない場合には、□にチェックをしましょう。

「令和1年7月1日申請 ○○法務局」
これは、書類を提出する日付と、書類を提出する法務局を書きます。

書類を提出する法務局は不動産の所在ごとに異なります。

例えば、東京都港区の不動産であれば、東京法務局港出張所、東京都台東区の不動産であれば、東京法務局台東出張所という具合です。

どこの法務局でもいいわけではないので、注意して下さい。

法務局のホームページで管轄が確認できます。

課税価格
取得した固定資産評価証明書の評価額の、1,000円未満を切り捨て金額になります。

例えば、固定資産評価証明書の評価額が8,377,800円の場合、8,377,000円になります。

登録免許税
登記にかかる費用です。

税価格に1000分の4をかけて、100円未満を切り捨てた金額です。

先の例で、固定資産評価証明書の評価額が8,377,800円の場合、課税価格が8,377,000円になります。

これに、1000分の4をかけます。

8,377,000円×1000分の4=33,508

100円未満は切り捨てなので、33,500円ということになります。

登録免許税は収入印紙で納付することになっています。

収入印紙を白紙の用紙に貼ります。

割印や消印をしてはダメです。

ただ貼るだけです。

不動産の表示
事前に取得した不動産の登記事項証明書の表題部という部分があります。

各項目について、証明書の記載をそのまま写してください。

以上で、申請書に必要事項が記載できたと思います。

申請書の作成ができたら、印刷をして、「印刷した申請書」、「相続関係説明図」、「収入印紙を貼った用紙」をまとめて、左側をホッチキスで止めます。

各相続人が申請書に印鑑を押します。

認印で大丈夫です。

最後に、全ページのつづり目に契印をします。

完成です。

書類を法務局へ提出


作成した申請書と必要書類(添付情報のところで記載した書類)を法務局に提出します。

提出の方法ですが、直接、法務局の窓口で書類を提出することもできますし、郵送で法務局に送付することもできます。

法務局の窓口で書類を提出する場合には、登記申請の受付窓口がありますので、そこで書類を提出します。

郵送で法務局に送付する場合には、封筒に、宛先と「不動産登記申請書在中」と記載して送付しましょう。

普通郵便でもよいかと思いますが、簡易書留等の記録が残るものがよいと思います。

窓口で提出、郵送による送付のいずれも可能ですが、窓口での提出をおすすめします。

法務局には、一般の方のために、登記手続案内という窓口があって、登記相談員という方が書類の確認をしてくれます。

事前予約制になっていますので、あらかじめ予約をしてから、出かけて下さい。

また、登記申請をして、登記手続きが完了するまでに、だいたい1週間ぐらいかかります。

法務局によって異なります。

その場ですぐには終わりませんので、注意して下さい。

書類提出時に、この登記完了予定日を確認しましょう。

この登記完了予定日までに、法務局から書類の訂正等の連絡がなければ、登記が無事に完了します。

なお、登記が完了しても、法務局から個別に、完了した旨の連絡はありません。

登記完了予定日までに、法務局から書類の訂正等の連絡がなければ、無事に完了していると思って大丈夫です。

法務局から完了書類の受取


書類に不備がなく、手続きが終わると、法務局から登記識別情報と登記完了証という書類が交付されます。

「登記識別情報」はいわゆる昔の権利証に相当するもので、「登記完了証」は文字通り、登記が無事に終わりました、という書類です。

受取方法ですが、①法務局の窓口で受取る方法と、②郵送で受取る方法があります。

①法務局の窓口で受取る場合 


登記完了予定日を過ぎたら、登記の申請の際に作成した申請書に押した印鑑、身分証明書(運転免許証等、その他の本人を確認することができる文書)を準備して法務局に行きましょう。

そして、申請するときに、書類を提出した受付窓口に行き、「相続の申請をして、完了書類を受取りに来ました。」と係の人に声をかけて下さい。

係の人が本人確認をした後に、書類を受取ることができます。

これで、手続きが完了です。

②郵送で受取る方法


申請をするときに、提出する書類の他に、切手を貼った封筒をいっしょに提出します。

郵送の方法は、本人限定受取郵便というものになりますので、その分の切手を貼って下さい。

また、作成した申請書の適宜の場所に次のように記載してください。

「申請人の住所へ送付の方法により登記識別情報通知書、登記完了証の交付を希望します。」  相続登記が完了すると、法務局から、提出した封筒で完了書類が郵送されてきます。

これで、手続きが完了です。

遺産分割協議による相続(相続人全員で誰がどのくらいの割合で相続するかを決める)


法定相続の場合の書類に比べ、遺産分割協議書という書類を作成する必要があります。

相続人間でそのように相続するかを決めた書類になります。

見本例は法務局ホームページにあります。

 ↓
「21)所有権移転登記申請書(相続・遺産分割)」になります。

協議書を作成したら、相続人全員が実印を押して、印鑑証明書を添付する必要があります。

遺言書による相続(亡くなった方の遺言書に基づいて相続する)

遺言書がある場合です。

法務局ホームページの「 18)所有権移転登記申請書(相続・公正証書遺言)」と「19)所有権移転登記申請書(相続・自筆証書遺言) 」になります。

 ↓

公正証書遺言と自筆証書遺言がありますが、自筆証書遺言だと家庭裁判所の検認手続きが必要になります。

おわりに


以上で、説明は終わりですが、相続登記は難しい登記手続きだと思います。

放置しておくと、相続人に更に相続が発生するなどして、権利関係が複雑になってしまい、手続が困難になってしまいます。

ですので、なるべく早めに手続きを済ませるようにしましょう。

よく分からない、面倒くさい、時間がないという方は、司法書士に依頼しましょう。

費用はかかりますが、すべて手続きをやってくれますので、安心です。

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